しばらく前に書こうと思っていた記事ですが、ちょうど時間ができたので書いてみました。
動機
この夏、お絵描きAI として Midjourney、Stable Diffusion が登場し、続いて Novel AI が注目され始めました。これまでも、AIが人の仕事を奪うかについては、さんざん議論されてきました。
最初に申し上げると、この記事は完全に私見です。専門家の意見が大事かもしれませんが、間違っていたとしても、自分の見解をまとめておきたいと思いました。
※参考にしたことによる責任は取れません
AIは仕事を奪うか?
AIは仕事を奪うか?
最初に私の結論を言うと、奪うと思います。
それがどんな手段で達成されるかは分かりません。
ただし、それが起きそうな場所は予想ができます。成熟した業界です。
AIについて
最初に弁明すると、現在AIと呼ばれているプログラムは厳密には機械学習です。AIはその定義内に感情を持つことが含まれるからです。

AI、機械学習、ディープラーニングの違いを説明できますか?機械学習と統計の違いは? (1/3):MarkeZine(マーケジン)
なので、この議論は「機械学習」は仕事を奪うか に置き換えます。
AIが仕事を奪う工程
綿織物産業に起きた産業革命の例
産業革命の基本構造は、2工程以上ある生産工程の一部が突出して生産性が向上し、その変化(インバウンド)が産業構造、ひいては取引の力関係を逆転させてしまうことにあります。

イギリスの場合、そのきっかけは紡績と織布が早くなったことでした。
なお、最初の織機は、産業を変えるためでなく、一人の夫が妻の負担を軽くするために作ったものでした。また、その技術が普及したのも、国のサポートではなく、技術に関心を持った民間人の熱意でした。
お絵描きAIの例
これと同じ流れが、絵師の間に起きていると仮定します。
便宜的に、絵描きの工程を 要求整理⇒輪郭化⇒着色 に分けると、お絵描きAIは要求整理をコマンド(呪文)にパターン化し、輪郭化 と 着色 を高速化しています。

お絵描きAIは、絵師の仕事を奪うために作られたものではありませんでした。おそらく、絵師の要求整理をパターン化し、輪郭化、着色化のアイデアを捻出する手助けとして開発されたと思います。
そして、この技術に関心を持った絵師と技術者の熱意によって、Twitter上で一気に拡散されました。
関心⇒成熟⇒パターン⇒自動化⇒失職
最初の話に戻ると、仕事が奪われるのは常に 成熟した業界 なのではないか、という仮説を検証していました。
機械学習プログラムが意図せず仕事を奪ってしまうのは、大量にサンプルが存在し、かつ開発者が関心のある分野に限られます。
これは、言い方を変えれば、創造的な分野と思われていたデザイン業界の中でも、ある分野においては、描き方がパターン化されてきたことを意味します。つまり、Midjourneyではクラシックな絵画やポスター、Stable Diffusionでは写真、Novel AI では萌え画が(カテゴライズにだいぶバイアス入ってますが)それぞれ成熟した産業とみなされ、市場に大量のサンプルがあふれた結果、学習できる環境になったことを意味します。
(上限・下限はあるものの、統計的には学習量≒精度なので、絵師が多くいても、特徴が似通った作品が大量に生まれると、学習によって模倣が可能なものになる)
そういう意味で、成熟した業界=作業がパターン化された業界は、機械学習プログラム に模倣される(≒仕事が奪われる)ことになります。ただし、冒頭に述べたように、この構造変化は、産業革命から何も変わっていないように思います。
なお、機械学習に関して言うと、常に課題はあります。わざわざ AI でなく 機械学習 と言ったのは、機械学習は人に創られたものなので、いつまでも、人の美的感覚という教師を必要とすることです。(ここでいう教師は機械学習における教師(答えデータセットや損失関数)とは必ずしも一致しない)
まとめ
あるパターンに関する機械学習プログラムが、いつ、どこで日の目を見るかは分かりません。ただ、自分の分野をひっくり返すAI(というより自動化プログラム)が出てきたとしても、人との違い(できること、できないこと)と、順応(技術を使いこなすだけでなく、人がその良し悪しを判断するポイントに着目する)を忘れないことが、人として生き残る秘訣のように思います。
ありきたりのことを書いた、つまらない記事だったかもしれません。しかし、誰かの意見を鵜呑みにするのでなく、自分は今時点でこう思う、こう思ったを残そうと思った次第です。最後まで目を通していただいてありがとうございました。
(以上)