この記事は、ゲーム作りでクラウドファンディングに挑戦しようとした時の、国内の各サイトの傾向と、心構えなどをまとめたものです。
はじめに・動機
tomo-mana/ゲーム化プロジェクトでは、2022年2月~3月に、Campfireでのクラウドファンディングに挑戦します。
tomo-mana.hatenablog.com
クラウドファンディングに挑戦するにあたり、アプリ系ゲームでの事例を調べたとき、海外での事例(Kickstarter)はそこそこあるものの、国内ではカードゲーム・ボードゲームが多く、アプリはまだ事例が少ないと感じました。
クラウドファンディングに挑戦するにあたって、私を含むプロジェクト初心者が十分な事例研究をして臨めるよう、私の方で調べた内容を公開することにしました。
記事への感想は、メールまたはTwitterで受け付けます。一連の記事を読んで、挑戦してみたいと感じた方や、気になった点、間違っている点などがありましたら、連絡いただけましたら幸いです。
なお、記事へのリンクを貼っていただくのは構いませんが、勝手に記事をコピペ・編集して、自分が書いた記事のようにふるまうこと(盗用・剽窃)はやめましょう。わたしもそこまでお人好しではありませんので、一連の記事が私にとってもWinになるように公開しています。
クラウドファンディングについて
クラウドファンディングとは Crowd(群衆)からFunding(資金調達)を行うもの*1で、特にインターネット環境でクラウドファンディングを行う仕組みとしては、2001年にアメリカで始まった「ArtistShare」が起源のようです*2。
各サイトの傾向
2021年現在、クラウドファンディングを行うことができる国内の主なサイトとしては、CampfireやMakuakeなどがあります。海外ではKickstarterなどがあります。
サイト | 設立 | ユーザー数 | ゲームタグ | タグでの投稿数 |
---|---|---|---|---|
Campfire | 2011年 | 590万 | ゲーム・サービス開発 | 1000件までしか見られない |
makuake | 2013年 | 130万 | ゲーム | 148件 |
Readyfor | 2011年 | 90万 | ゲーム | 132件 |
Kickstarter | 米2009年 日2017年 |
(世界)2000万 | ゲーム | (世界)64245件 |
国内でのゲームカテゴリでのクラウドファンディングはまだまだ事例として少なく、特に事例研究(第3回)、リターンの設定(第3回、第4回)、活動報告(第5回)において、海外サイトを研究する事には大きな価値があります。
ゲーム作りのジャンルでは、カード・ボードゲームなど、リターンとしてモノを渡せるハード系や、アプリやWEBを使用したゲームであるソフト系のほか、VTuberデビュー応援や、地域に特化したアクティビティの支援などがあります。
ソフト系ならCampfire、ハード系ならMakuakeが適しています。なぜなら、この2つのサイトが圧倒的にユーザーの母数が多いからです。特にソフト系ではCampfireが、ハード系ではMakuakeでの出典例が多いです。
多くの人にクラウドファンディングの内容を見てもらい、目標金額を達成するためには、それなりにユーザー数が確保されているサイトを選ぶことが大切になります。投資する側も慣れている人が多い利点もあり、初回であれば、既に同じ分野でいくつか挑戦しているサイトを選ぶことが無難です。
このシリーズでは、特にソフト系のゲームに特化したクラウドファンディングについて紹介していきます。
ソフト系ゲームとは
先ほどソフト系と呼んだゲームとは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか?
例えば、ブラウザで遊べるゲーム(WebGLなど)、PCで遊ぶゲーム(Steamなど)、iphoneやAndroidなどのスマホアプリが代表的です。開発に慣れた方だと、Nintendo SwitchやPlayStation4/5用の開発を進めている方もいます。
開発言語はUnity、Unreal Engineなどのゲーム開発環境のほか、特定ジャンルのゲームを作るのに特化したソフト(RPGツクール、ティラノスクリプトなど)があります。
初プロジェクトの場合の心得とは
クラウドファンディングを始めて行う上で、大切な心得とは何でしょうか。いくつかの項目に分けて載せてみましたので、1つずつ見ていきましょう。
①自分で100%出資する覚悟を持つ
初回のクラウドファンディングのプロジェクトにおいては、100%自分で出資するのが無難かと思います。まず自分が出資して、確実に目標を達成してから、+αでオフラインでの投資に期待します。
②オフラインでも集客をする
クラウドファンディングと言うと、ネット上で完結するイメージを持つことが多いようですが、ネット上に確実に投資していただけるファンが少ない場合は話が変わってきます。
オンラインでクラウドファンディングをするのだから、TwitterやInstagramなどのSNSでアナウンスしたらいいのでは、と考えるかもしれません。しかし、オンライン上に多くの熱狂的なファンをもっていない限り、オンラインだけで集客が完結することはまれです。
そのため、オンラインだけではなくオフラインでも集客を行うことを検討しましょう。オフラインでの集客であれば、NPOなどで寄付を募る方法も参考にできます。日本で社会法人を立ち上げる時は、最低でも自分だけで必要額の50%(できれば100%)、足りなければ家族、兄弟、親戚、友人、知人などから100%まで出資を募り、+αを第三者から支援して頂くことがよく行われるようです*5。
オフラインで最低金額を確定しておいて、もしオンラインでも支援が得られたらラッキーぐらいの心構えでいれば、思っていたより支援が集まらなくても、必要以上にがっかりすることは無くなります。
③目標設定金額は低く、100%達成までの時間は短く
クラウドファンディングでの目標設定金額は、最低金額(1st Goal)のほかに、状況に応じて2nd、3rd Goalなど、段階的に設定できます。このうち、最低金額だけは、必ず達成する必要があります。
なお、ゲームでプロジェクトを行う場合は、ハード系だけでなく、ソフト系であっても、ほぼ購入型プロジェクトになります。購入型の場合、目標を達成できなかった時の選択肢として、All or Nothing と All In の2つがあります。
All Inは目標に到達しなくても、投資金額を受け取る事が出来ますが、プロジェクトにかかる手数料が高くなります。一方、All or Nothingは、最低金額に到達しなければ1円も受け取る事が出来ませんが、手数料を抑えることができます。
プロジェクトの最低金額は低めに設定し、できれば20時間以内に達成できそうな設定にします。早めに目標を達成したプロジェクトは、お金が集まりやすいと判断され、サイト内の目立つ位置に表示される確率が上がります。
金額設定は、本当に必要な金額と、その他の金額に分けましょう。ただし、低く設定した方が良いからといって、プロジェクトの遂行にはとても足りない金額にしてしまったら、元の子もありません。最低金額は、プロジェクトに必要な最低限の金額を設定します。通常は100,000円以下のプロジェクトが成功しやすいと言われていますが、ゲーム作りの場合、通常はもっと多くの金額が必要になると思います。
最低限の金額しか集まらず、しかも100%自分で出資するのなら、わざわざインターネットでクラウドファンディングなどしなくて良いのでは?と考えるかもしれません。しかし、プロジェクトをオンラインで公開する目的は、お金を集めるだけではありません。認知度を高める目的もあります。
プロジェクトを達成できれば、プロジェクトにかかる手数料を除いて、自分で出した金額は全て戻って来ます。手数料はかかりますが、プロジェクトを大々的に認知してもらうための広告費と思えば、安いものです。そのため、まずは本当に必要な額を最低金額として設定し、全額自分で出して達成させてしまうのが無難だと思います。
④社会貢献の側面についても目を向ける
少し視点は変わりますが、ゲームの開発費用をクラウドファンディングで募る場合でも、自分に投資してもらうことが、実は社会貢献にもなるという視点を深めておく必要があります。
ゲームだから、自分の作ったゲームでワクワクしてもらえればそれで充分!それ以上に何もないでしょう?と思うかもしれませんが、少し掘り下げてみると、実は一つのゲームを開発することにも、様々な社会貢献の側面があります。
詳しくは、第6回で掘り下げますが、私は、応援、貢献、寄付に分けて考える方法が良いと思っています。
①応援とは
応援とは、投資する側が叶えたい願望を、あなたが行動することでどのように助けるか、という視点になります。
たとえば、ローカライズは、日本語が母国語でない方のために、ゲームをプレイしやすくすると同時に、母国語でゲームを楽しんで制作者のファンになった支援者にとっても、あなたの作品が国境を超えて、海外でも知られるようになるという願望を叶えています。
同じように、動機がシナリオの追加であったり、過去のよく知られた作品に自分なりのオリジナリティを付けた作品を作りたい、あるいは世の中に無かった全く新しいジャンルを作りたい、などであっても、その作品が世の中に出ることで、何かしら支援者の願望を叶えている側面があります。
②貢献とは
貢献とは、自分が受け取ったお金で一緒に働く人を可視化することです。
仕事の一部をプロに依頼する場合でも、アマチュアの方に依頼する場合でも、あるいは自分だけ、または夫婦、またはサークルで作っているという場合でも、自分に投資することが、自分だけでなくより多くの人たちの営みを支えていること支援者に知っていただくことが重要です。
制作の一部を投資家に依頼する(体験してもらう)ことも、貢献の一つの形です。
③寄付とは
応援や貢献の視点が見つからない場合、投資いただいた金額の一部を、どこかの団体に寄付することを宣言する方法もあります。
寄付の場合は、できるだけ、自分の制作スタンスと、応援する団体の活動方針に共通点を見つけることです。これは、半ばこじつけでもよいのですが、見栄や嘘ではいけません。
たとえば、シューティングゲームを開発している場合、ゲームを通じて動体視力や反射神経が鍛えられることに楽しみを覚えているのかもしれません。この場合、たとえば自分の身近なスポーツサークルが活性化して、こどもたちの健全な教育を助けられるという視点があれば(そしてあなたが本当にそう希望するのであれば)、投資額の一部を寄付するというあなたの宣言を、支援者は前向きに捉えると思います。
クラウドファンディングだけではなく、全ての物事に通じることですが、成功の裏には多くの人の支援があって、成功に繋がっています。
クラウドファンディングは言ってみれば、リレーと同じです。他の人から自分が受けた投資のバトンを、次は誰に渡していくのかがとても重要になってきます。
(クラウドファンディングの具体的な数字等はCampfire、Readyforのサイトで調べたものです。追って脚注を追加していきます)
(この記事の執筆には、momiichanさまの協力をいただいています)